母のお願い

1/5
1097人が本棚に入れています
本棚に追加
/37ページ

母のお願い

 王が去った後、参列していた男達も退室していく。  そうしてようやく、ランバートは体を起こす事を許された。  軽く伸びをして、固まりそうな肩を回して辺りを見る。この兵府宿舎で陛下に面会する為に使われるこの部屋は、滅多な事では入る事ができない。  高い天井には美しいフレスコ画が描かれ、この国で有名な叙事詩の一場面を楽しむ事ができる。  高い位置にある窓からは惜しみなく陽の光が入り、室内は予想以上に明るい。  白い壁面には国旗の他に、この兵府それぞれのエンブレムが描かれた幕が下がっている。 「ランバート・ヒッテルスバッハ」 「はい」  後ろで声がして、そこに一人の男が立っているのに今更気づいた。ランバートはそちらに向き直り、剣を腰に掛けて歩み寄った。 「部屋まで案内しよう。宿舎と設備に関しては、同室の者に案内を任せてある。着替えてから回るといい」 「有難うございます」  同室者。その存在を今更思い出したランバートは、少し考える。ここにいる限り寮での生活となる。同室者はかなり重要な問題だ。  まぁ、誰とでもそれなりに上手くやる術は持っている。ランバートは案内されるがまま、一階の廊下を抜けて二階へと上がっていった。
/37ページ

最初のコメントを投稿しよう!