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弥生は入院したが、病気が治ることと、弥生の気持ちはまた別の問題だ。いつになるかはわからないが、弥生が退院してきたらここのマンションも引っ越さなければいけないだろう。回復具合にもよるだろうが、睦生が誰かと一緒に住んでいることがわかったらまた、どうなるかわからない。
「大丈夫。そのときは、俺がずっとそばにいますから」
今度は柊が睦生をしっかりと抱きしめると、睦生が眩しそうな顔で柊の髪を梳いた。
「ん、なに?」
「…………そんな顔するんだな」
「そんな、顔?」
「出会った頃は、泣き顔ばかり見てた。悲しみに暮れている柊を前に、何もできない自分が苦しかった」
「先生……」
「だから今、柊が俺にそんな頼もしい顔を見せてくれるのは、すごく幸せなことだなって思って」
「それは、む、睦生さんが一緒にいてくれるからです」
「えっ?」
「だから、そんな顔ができるんだと思います」
あの頃のように、毎朝目を覚まして絶望しなくていい。そう思える今日をくれたのは睦生だ。
素直な気持ちを告げると、真っ赤になって目を逸らす睦生にまた愛しさが募る。
なぜ俺は――何度も恋をするのだろう。
どれだけ考えてもその答えは出ない。でも、誰かを想っている自分のことは、そうじゃないときの自分よりずっと好きだ。
睦生の腕が伸びてきて、抱き寄せられる。胸に顔を埋めると、頭の上に熱い息がかかった。そして甘い声が聞こえる。
「敵わねえな……柊といると、なんでもできる気になってくる」
「それは俺もです」
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