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 殊勝な様子が更に意外だったが、気にしないでくださいと伝えてキッチンへ向かった。  天陽が亡くなってから初めてぐっすりと眠れたので、このところからは考えられないくらい、驚くほど体が軽くて、てきぱきと食事の準備を進められた。 「先生、好き嫌いはありますか?」 「ない。世話になるばかりでは悪いから、俺にも手伝いをさせてくれ」  睦生がキッチンへ来て腕まくりをすると手を洗った。とりあえず水菜を切ってもらったのだが、普段医師の仕事をしているときとは比べ物にならないくらいのひどい手つきで包丁を扱うので、柊は気が気でない。患者さんを診る大切な手に傷をつけられたらたまらないので、結局、洗いものや、並べる作業に徹してもらった。  ありあわせの物でなんとか、水菜と厚揚げの煮物、大根のステーキ、土鍋で炊いたご飯とみそ汁ができあがった。柊はまだ食欲がそれほどないので、睦生にだけ豚の味噌漬けをさっと焼いて添えた。 「余りものなので、こんなものしかできなかったですけど」 「……うまそうだな」  わかりやすく目を輝かせた睦生の腹の虫がぐぅと鳴った。ついそちらを見てしまうと、夜勤明けに軽食を食べたきりだからと、小さな声で呟いた。 「食べましょうか」     
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