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そう声をかけると頷き「いただきます」と手を合わせた。茶碗を手に取る仕草は、粗暴な言葉遣いからは想像できないくらいきれいで、なんだかんだいっても育ちがいい人なのだと思う。
「うっ……うまいな!」
「そんな、大げさな……」
「お世辞ではなく本当にうまいよ。野菜は育てているものか?」
「はい」
「温かい食事にありつけたのも久しぶりだ……本当にうまい」
それからはほとんどしゃべらず、睦生は夢中でご飯を食べていた。こんなに勢いよく食べる人を見るのは久しぶりで、それはなんだかとても気分が良かった。
食事が終わるとお茶を淹れて、冷蔵庫から睦生が買ってきてくれたプリンとヨーグルトを差し出す。
「頂いたものを早速で悪いですが、どちらがいいですか?」
「俺はいい。児玉さんに買ってきたものだから」
「ありがとう……じゃあ、遠慮なく頂きます」
柊はヨーグルトに口をつけた。ひんやりとした感触と、淡い酸味と甘さが舌の上に広がる。
「……冷たくておいしい」
ほんのわずかだが、睦生がほっとしたのがわかった。
「前も思ったが、あなたの淹れたお茶はとてもおいしいな。相当いい茶葉を使っているんだろうか」
「え……ネットでお茶園のものを買ってますけど、普通の家庭用ですよ」
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