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 玉露は天陽が好きでよく飲んでいたが、意外とカフェイン含有量が多いので、たまの楽しみにしており、普段は煎茶が多かった。いま睦生に淹れたのも同じものだ。 「では、淹れ方にコツがあるんだろうか」 「お茶好きの父に仕込まれたので、これだけは得意なのかもしれません。てか、三十過ぎの男がふたりでしんみりお茶を飲んでるのって、なんか変ですね」 「そうか? 俺は気にならないが」  外は今も雪が降り続いている。天気予報では日付が変わる頃に雨になり、明日は晴れると報じていた。だがここは山の中といった方がいいくらいの場所なのであてにはならない。睦生もさすがに今後の天気が気になってきたのか、何度も庇窓をみては小さく息を吐いている。 「俺のだときっとサイズが小さいので……天陽さんのでいいですかね。あっ、もちろんパジャマも下着も未使用のですから」 「なにからなにまで……すまん」  睦生に風呂を勧めた後、ソファに座ってダイニングテーブルを見た。ここで、こんなに穏やかな食事をしたのはいつ振りだろう。  天陽が亡くなってからは誰にも会いたくなかったけれど、誰かと共にする食事の心地よさを少し思い出してしまった。 「お風呂……先に頂いた」  しばらくして睦生が風呂から上がってきた。 「離れには先ほど暖房を入れておきました。おやすみなさい」     
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