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「児玉さん……っていったっけ? 俺が誰だがわかるか?」
「知ってます。天陽さんの主治医の先生でしょ……」
「おっ、それくらいはわかってるのか」
「それでなんなんですか?」
「ん?」
「なんで主治医の先生が俺にかまうんですか?」
「桂木さんから、あんたのことを頼まれたのさ。まったく、俺だって暇じゃないのにな。だいたい医師の仕事の範疇でもないだろ」
天陽がこの主治医に何を頼んだというのだろうか。
「自分が息を引き取った後、あんたが死のうとするかもしれない。だから気にかけてやってくれってさ」
「なんだそれ……」
呆れてそんな言葉しか出てこない。いったいなんだって天陽はそんなことを、この主治医に頼んだのだろう。
「借金まみれのあんたは、桂木さんの財産を狙って世話をしている。だが死ぬ間際にあんたには何もやらないと打ち明ける。だから様子を見てくれって話だったかな」
「……そんな陳腐な話を信じたんですか?」
「確かに嘘くせえ話だと思ったな。でもあんたが死ぬかもしれないってのは、なんとなく信憑性があったぞ。桂木さんよりもあんたの方がいっつも死にそうな顔してたし。実際今死のうとしてたしな?」
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