ワンダフル!

1/32
13人が本棚に入れています
本棚に追加
/35ページ

ワンダフル!

 笑顔で出迎えた人間たち。初めて会うというのに、こいつらなんでこんなに笑顔なんだ。そんなに俺を歓迎しているというのなら、その後の俺の酷い扱いは一体どう説明してくれるというのだ。  眠る時はいつも一人だった。寒々とした空の下、木製の箱の中で夜を明かす。温室育ちの俺にとってはそれが自分の家と知ったのは衝撃だった。震える身体を丸めてクンクン鳴きながら眠りについたのを覚えている。  ここに来る前に住んでいた家の匂いがこびりついている、ボロ布だけが唯一、俺の心の支えだった。  その匂いをかぎながら、兄弟とじゃれ合った日々を思い出していた。  もしも人間になれれば、こんな寂しさ、味わわなくて済むのだろうか。  だったら絶対、人間になってやる。いつか人間になって、こんな不当な扱いから抜け出すんだ。
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!