プロローグ

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プロローグ

 俺はこの家の生まれではない、はずだ。  記憶が曖昧なのだが物心つく前なのだからしょうがない。  かつて俺は小さなカゴに詰め込まれ、油臭い空気を吐き出す二輪車に乗せられて、結構な時間、ガタガタと揺られながらここにたどり着いた。  酔って何度か、吐いた。  さらに、箱が開いて目にしたその世界に、俺は追い打ちをかけられた。  そこにはいつも一緒だったママ、それに兄弟たちの姿がなかった。  緑の芝生と見慣れない植物。落ち込む俺の気持ちとは裏腹に、花壇には色とりどりの花がまるで俺を歓迎しているかのように咲き誇っている。  たった一匹、見知らぬ世界に連れてこられた。
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