真実の夜*

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「……鷹さん」 「俺もお前が欲しい」  闘いのあとの高揚した気分がふたりともまだ抜けきっていない。自分の身体も熱くなっていたが、迅鷹の逞しい身体も同様に熱を放ちはじめていた。冬に向かい始める夜気は冷たかったが、それでも寒さは全く感じなかった。まとわりつく着物が邪魔だというように、迅鷹はもろ肌脱ぎになると隼珠の着物の前もはだけさせた。迅鷹の肌のいたるところから血の匂いがする。小さな傷がいくつもついているらしい。けれどその痛みも、迅鷹にとっては興奮のもとになるだけらしかった。  迅鷹の背後に、淡く翳る月が見える。そうして眼下には燃える炎が。右肩には翼を広げた猛禽が、隼珠を見つめる瞳には欲情の煌めきが。迅鷹が再び唇を重ねてくる。  大きな手のひらが、胸を包みこんだ。隼珠の小さな乳首を指の腹でキュッとつまみあげる。 「――……っ、あ」  思わずでた喘ぎに、迅鷹は口の端をあげた。精悍な容姿を少し悪くゆがめてから、かがみこんで、小さな尖りに唇をあてる。 「ぁ……ぁ、あっ」  きつく吸われて、全身に痺れがきた。繊細な神経が通ったところだから、舌先で弄られると、どうにも我慢できない気持ちよさに襲われる。  迅鷹の舌はいつも温かくてなめらかで、けれど動きは意地が悪い。小さな粒を唇で挟みこんで、歯と舌先でくすぐるのだ。   「やっ……、た、たか、さっ……」  そうされるともう、隼珠はただ悶えて苦しむしかない。硬くなったものが、下帯の中ではしたなく跳ねた。欅の太い幹にもたれかかりながら、男の唇に身を任せていると、手が腰に回される。帯をほどかれ、着物をしどけなく乱された。両足を大きく割られて、隼珠の持ちあがった股間があらわになった。  下帯をじっとりと濡らす様子に、隼珠は恥ずかしさに居たたまれなくなった。 「……ごめんな、さ」 「なんで謝る」 「こ、こんな、いつも、俺、鷹さんに触られると、こんなふうに、なって……」  我慢できなくて。ねだるように揺らしてしまって。だから迅鷹は仕方なく、手を施してくれるのだと思っていた。 「俺ばっかりが、いつも、世話かけて、しまってて」
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