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お年寄りにも色々ありまして、よくあるオレオレ詐偽に引っかかるような、根は善人なタイプがいますな。
また逆に、オレオレ詐偽の技術を取り入れて、ひと儲けできんかと思案する様な、業突く張りのクソジジイ、鬼ババアの呼び名がピッタリくるような御仁もおられます。
とある田舎町に齢九十に手が届くという、大地主の老婆がおりました。
この婆さん、先ほどの分け方で言えば後の方。
もともと地元ではそこそこな分限者だったんですが、それだけでは飽き足らんというんで、世界に名を連ねるほどの億万長者になるのが夢でした。
若い頃から、連れ合いを持ったら財産も半分になるからそれが嫌で、独り身を通してきた人生。ここまでは、地元からその近隣に根を張る大口高利貸しとして、財を成してきたのでした。
ところがグレーゾーンなどと規制が厳しくなってきた昨今、なんとか新しい金儲けのネタがないかと鵜の目鷹の目で探しておりました折、ピンときたのが、近頃の若者には、危ないクスリにハマってしまう連中が増えているという話です。
楽しい妄想・幻覚を求めるのは、有名な野球選手やタレント、ミュージシャンにさえあることだというので、上手くやれば大儲けできると考えたわけですな。
しかも自分が管理しているブツは、背中に彫り物のある本職さんとはまったく関係がない。いわゆる脱法ハーブなどどいうものではないので、手が後ろに回るなんてこともありません。
思い立ったが吉日とばかりに、婆さんは早速行動を起こしました。
「伐採ぢゃ!みんな裏山に入れ!一本残らず伐採ぢゃ!」
てなもんで、自社の強面社員を特別プロジェクトと称して、屋敷の裏山に派遣。ブツの確保を厳命したのでした。
切り取ったばかりの材料は、大型トラックに乗せられ山の麓の特設加工場まで運ばれます。そこからプロジェクトのおっさん連中は、工場仕事に入るわけです。
いつもは返済が滞る客相手に、恫喝するのが主な業務ですが、社長命令とあれば突然の肉体労働もやむを得ない。彼らはひと月ばかりの泊まり込み作業に精を出しました。
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