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「今宵の晩餐会は君のために開いたのだ。僕は君と再び会える今日という日を心待ちにしていたのだ。君のことを愛しているから」
「君が私を……?」
「それほど驚くことかい? ヴィンセント、君だって私を愛しているだろう」
ティムは完璧な笑みを浮かべながら食卓に設置されたカラトリーからナイフを選び、鋭い刃先をヴィンセントに見せつけた。
「何を考えているのだ……馬鹿な真似はやめてくれ」
きらりと光ったナイフに恐怖におびえ青ざめたヴィンセントの顔が映る。
「震えているのかい? 安心したまえ。僕が君を傷つけるとでも思ったのかい、ヴィンセント。僕は君を愛しているから。君に無償の愛を授けたいと考えるのは普通のことだろう?」
次の瞬間、ティムは自らの腹にナイフを突き立て、そのまま真下に切り裂いた。噴き出す血の勢いにかぶさるようにヴィンセントは悲鳴を上げた。ティムの血は黒く、とてもこの世のものとは思えなかった。ヴィンセントはこの場から逃げ出したかったが、どうしても身体が動かず、どくどくと流れ出るティムの血をまざまざと見せつけられた。
「ねえ、ヴィンセント。先ほど君は僕の料理を拒否したけど、あれはいいのだ。本当に特別なのはこれからだから」
ティムは切り開いた腹に両手を突き刺し、めりめりと中身をまさぐった。彼は涼しい顔で自らの腹をえぐっていき、やがて何かを取り出してヴィンセントに見せた。ヴィンセントは直視しようとしなかったが、ティムの奇妙な力で目線を固定され、まばたきすら許されなかった。真っ黒な血に染められたそれは不気味なほどゆっくりと脈を打ち、体内から切り離された後も鼓動を刻んでいた。
「僕を食べて……」
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