贄の食卓

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 ティムは手のひらに包んだそれをひとくち食べた。それからヴィンセントの口元に持っていき、言った。 「ヴィンセント。僕は君を愛しているから、僕と同じ世界で暮らしてほしい。そうすれば君はもう老いることはない。君が望めばあの頃の美しい君に戻ることだってできる。ずっとふたりで暮らしたい。お願いだ、ヴィンセント。どうか僕の願いを受け入れてくれたまえ。二十年だぞ。僕はひとりで寂しかった。どうしても君を見つけることができなくて。君はこの世にいないのかと思ったのは一度や二度じゃない。ヴィンセント、怖がらないで。僕はずっとティムだ。君だけのティモシー・マクグラスなのだ。そして君は僕にとって唯一の愛する人だ。君のためならこの身を切り裂ける。言葉通り、僕のすべてを君に捧げる。だからお願いだ、ヴィンセント。僕を食べて……」  それが唇に触れたとき、ヴィンセントの精神は崩壊した。
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