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第2章 満たされない欲求
蜜花。貴方はもうどこにもいない。
私の中の蜜花は知んでしまったの…
高級感のあるホテルのラウンジのバーで1人静かにグラスを傾けて、夜景を眺める。
20歳になった蜜花のガラス越しに映る美貌は、あの頃からさらに増して艶やかで、清純さになんとも言えないエロティックさがプラスされて、完璧な容姿に出来上がっていた。
だが、今ガラスに映る蜜花は、蜜花ではない。
彼女は名前を変えて、ある業界に足を踏み入れることを決めた。
「お待たせ。悪いね華蓮ちゃん、会議が長引いちゃって。」
「いいんです。こんな素敵なバーに呼んでいただいて…とっても楽しいですよ。」
現れたのは、有名ファッション雑誌の社長、紺野 亮太だ。
そう、蜜花と言う名を捨てて華蓮が足を踏みいれようとしているのはまさにそんなキラキラとドロドロの入り混じる女の戦場だった。
「それは良かった。なんせ、君に満足して貰うために特別に貸し切ったんだからね…喜んでもらえると嬉しいよ。」
「あら…貸切だったんですか。私の為に?嬉しいわ…。」
華蓮は頬を赤らめて照れて見せた。
言葉遣いも、台詞も、対応も…
全ては計算通りだ。
今日の設定は清楚感あふれる完璧な美少女、琴川華蓮。
純白の高級感のあるワンピースに身を纏って、清楚感を醸し出す。
ワンピースは少々谷間が見えるほど胸元が開いており、セクシーさも際立たせる。
100パーセントの清純派ではこの商談はやっていけない。
大人の色気を漂わせ…抱かれなければならないのだから。
これが今日のシナリオ。
おそらくシナリオ通りに事は進むはず。
この商談が成立すれば、私は有名モデルへの階段…いや、琴川華蓮の為に用意された高速エスカレーターといったところか。それに乗って一気にトップモデルとして輝かしい世界へと堂々と乗り込むのだ。
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