1章 激痛の最中

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1章 激痛の最中

激痛に耐えながら、僕は進んでいる。 見慣れた東京の街並み。見慣れた通勤風景。 今日という1日は何ら変わらず、平和に流れている。 変わったのは世界ではなく僕だ。 見慣れた風景が、一夜にして悪魔に乗っ取られ、その街並みが漆黒に染められたみたいな、 地獄のような状態だった。 30年の人生の中で、最も危険で深刻の事態。 今の僕の状態を一言で表すのならば「絶望」だ。 この絶望から脱することを僕は何度も願った。何度も夢みた・・・ 「ああ神よ。あなたはどこにいるのですか。」 普段は神様を意識したりなどはしない。 だがこんな状況では、最早神に祈るしかない。 「もう限界・・・」  歩む力が徐々に失っていくのが分かる。 悪魔に敗北を喫する瞬間がきたのかもしれない。 そんな中どこかからか不思議な声が聞こえた。 「ゆきおに、・・・・・を教えてあげよう。」 荒島ゆきお。僕の名前だ。誰かが僕の名前を呼んだ。 「誰?」 想像を絶する痛みの中で、僕はその声に応える。 しかし、そんなことは意味のないことだと分かっている。 今この場には僕の知っている人物は居ない。 激痛から気をそらすために脳が作り出した幻聴。 しかし今の僕にはありがたいことだ。     
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