1章 激痛の最中

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それで少しでも気が紛れるならば。 「うう!」 痛みが僕を襲い一瞬ふらついた。その時だった。 きーーーーーーー!!!!! 火花が散るような摩擦の音を立て、一台の自転車が僕の目の前で急ブレーキをかけた。 「あぶね!!馬鹿野郎!どこ見てんだ!!!」 図太い声で40代くらいのサラリーマンが怒号をあげる。 「す、すいません」 気をつけろと言い放ち自転車は過ぎ去っていく。 僕が今歩いているのは狭い路地だ。 多分ふらついた瞬間に自転車と接触しそうになったのかもしれない。 一刻を争うこの状況下で、なんたる不覚!なんたる不運!! 「今日のしし座のあなた!最悪の1日です!」 今日の朝、ニュース番組の女子アナウンサーが僕にそう宣告したのを思い出した。 確かその中で、トラブルに巻き込まれるから注意とも言っていた。 占い。 僕は占いが嫌いだ。 占いはいつだって悪い時だけ当たる。 今年の僕は運勢は最高の筈だった。 今年は夢を叶える大チャンスだと言っていた。 「何が最高だ。 今のこの状況をどう説明する!」 夢を叶える大チャンス。僕の夢は何なのだろうか。 いや、その答えはもう分かっている。 僕には妻と息子がいる。僕の夢は、家族が幸せに暮らすこと。     
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