2章 秘密のおまじない

2/5
前へ
/13ページ
次へ
凄まじいスピードで球を打ち合うその姿は、幼い僕の心を虜にした。 それからというもの僕は卓球に関するテレビ番組を見たり、本屋で卓球に関する書籍を立ち読みしていた。 いつしか僕は、将来卓球のプロになりたいと思っていた。 しかしそれを誰かに話すことは嫌だった。 僕にとって、夢とは、カゴの中で飼っている鳥なのだ。 誰かに話すと、その秘密の夢の扉が開かれどこか遠くへ行ってしまい、決して叶う事のない夢になってしまう気がした。 まるで、鳥かごのドアを開けたら、飼っている鳥が飛んでどこか遠くへ飛んで行ってしまうみたいに。 そんな中でも、祖母にだけは話したいと思っていた。 祖母は秘密の話だといえば、それを守ってくれるし、何より「知恵」を聞きたかった。 しかし、いくばくかの沈黙の後、祖母が僕に言った言葉は予想していたものとは全く逆のものだった。 「ゆきお。厳しいことを言うが、夢を叶えるのは大変なんだよ。沢山努力しなければいけないし、沢山苦労もしなければならない。頑張って頑張ってようやく叶えられるのが夢なんだよ。」 そして祖母は僕の目を真剣に見つめながら言った。 「分かったかい?」 「…う、うん。」 当時僕は、厳しい答えに驚きと同時にショックを受けた。     
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加