一発目 アルジェント・セッテ

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「あと、これと。これ。それから、これも。これは、違うレースの編み方はないか?」 「ございますとも。さすが旦那様、お目が高い。これは新鋭デザイナーのジョン・ヨハン作でございまして」 「ジョン・ヨハン?」  聞いたことのない名前だ。 「はい。彼はまだ二十代の若者ですが、非常に腕のよいデザイナーでございます。当店では、最近彼の商品を取り扱うようになったのですが……売る側としても、これほど精密なデザインの素晴らしい商品を取り扱うことができることは、喜びでございます」  確かに、そのジョン・ヨハンとやらが作ったデザインのブラジャーは、今まで手に取ったものよりもレースの編み方が凝っており、おまけに非常に軽い。そして、手触りも素晴らしい。 「これでラッピングすれば、どんな女でも最高の女になるだろうな」  にっこりと紳士の微笑を返される。 「気が変わった。それも、もらう。もちろん、レースデザイン違いのもだ」  サラリーマンの月収を軽く超える金額を使い、その日の買い物は終了した。  車に戻り、そのまま花街へと向かう。  第二区の最大の花街は、アルジェントの管轄になっている。どの店も、アルジェントの許しを得て経営されているので、アルジェントの車が通れば否応なしに注目を集めた。     
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