一発目 アルジェント・セッテ

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 花街は、車と馬車が通れるほどの幅を取った通路を挟めて左右に商店が並び立つ。  飲み屋から、娼館、中には男娼館も存在する。  その街道の一番奥まったところにある大きな娼館の前で車は停まり、アルジェントは降りる。古い建物ではあるが、手入れがきちんとされており、夜の店らしいライトアップも完璧である。他の店と違い、呼び込みの女は誰も立っていないが、中が繁盛しているのは、談笑する楽しげな声や音楽からわかる。  娼館≪白雪姫≫。  花街最大にして、最古の娼館である。  その古さは、建物の老朽具合を見てもわかる。アルジェントの知る限り、自分の元が父親の下腹部で生産されるよりもずっと前から、この店は存在するらしい。  アルジェントは先代――前第七位から幹部位を委譲されると共に、この花街と共に≪白雪姫≫も任されている。アルジェントが幹部になってから、初めて任されたのも、この娼館のを預かるオーナー兼娼婦のアマンダとの引継ぎの挨拶だった。 「よう、アマンダ」  花街の街道に車が通った時から、連絡がいっていたのだろう。店の出入り口をくぐると、すぐに娼婦アマンダが出迎えてくれた。 「いらっしゃい、ベイビー」     
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