一発目 アルジェント・セッテ

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 挨拶をかわし、そういえば……と、アルジェントはアマンダに渡していた袋を出してもらう。中から、アマンダの分のプレゼント下着を取り出す。  その下着を見て、アマンダはおかしそうに笑い声を上げる。 「相変わらず、顔に似合わず律儀なこと」 「あんたには、何かと世話になってるしな。あと、口止め料みたいなもんだ」  アルジェントは腰に巻いていたバスタオルを剥ぐと、アマンダの前に堂々と下半身を晒しながら、着替え用の下着に手を伸ばす。下を履くと、アマンダにプレゼントした下着の入っていた袋に、手を伸ばす。  そして中から、一枚の総レース仕様の下着――ブラジャーをおもむろに取り出すと、手慣れた仕草で、つけ始めた。  ――自分へと。  誰も、アマンダ以外は誰も知らないアルジェントの秘密。  知られたら、死ぬか相手を殺すしかないと思っている、最大の秘密が、これだった。  マフィアの幹部として、暴力にまみれた日常を送るアルジェントの胸元は、女性用の下着が隠し、守っているのである――。     
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