一発目 アルジェント・セッテ

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一発目 アルジェント・セッテ

 帝国領。  第三ブロックの裏通りで小さな騒ぎが起こり、そして今、収拾されようとしていた。 「人のシマで面白れぇ真似してくれたな。ぁあ?」  男の後頭部を後ろから鷲掴みにし、廃ビルの古ぼけた壁で、その顔面を削ってやる。  すでに意識を飛ばし、鼻から血を流し、口からは血液交じりの泡を吹いている男の顔を、さらに壁に向かって三度、叩きつけた。うめき声すらもう出ないが、殺してはいない。  殺すのは簡単だが、一度目の“オイタ”は許してやるのがルチアーノ・ファミリーの流儀だった。  ただし、二度目はない。  その“オイタ”の質によるが、度の過ぎる“オイタ”は当人と、その周囲の人間、家族、友人、知人に至るまでに命をいただく……――という、血の掟(オメルタ)が存在する。  最も、勝手に薬をバラまこうとした小悪党相手に、そこまでの制裁を加える気にはならないが。二度目を見つけても、せいぜい、本人にザリガニの餌になってもらうくらいだ。 「ルチアーノ・ファミリーが仕切ってる、この第二地区でヤクなんざ売りさばこうなんざ、どこのカッペだてめぇ」     
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