134人が本棚に入れています
本棚に追加
一発目 アルジェント・セッテ
帝国領。
第三ブロックの裏通りで小さな騒ぎが起こり、そして今、収拾されようとしていた。
「人のシマで面白れぇ真似してくれたな。ぁあ?」
男の後頭部を後ろから鷲掴みにし、廃ビルの古ぼけた壁で、その顔面を削ってやる。
すでに意識を飛ばし、鼻から血を流し、口からは血液交じりの泡を吹いている男の顔を、さらに壁に向かって三度、叩きつけた。うめき声すらもう出ないが、殺してはいない。
殺すのは簡単だが、一度目の“オイタ”は許してやるのがルチアーノ・ファミリーの流儀だった。
ただし、二度目はない。
その“オイタ”の質によるが、度の過ぎる“オイタ”は当人と、その周囲の人間、家族、友人、知人に至るまでに命をいただく……――という、血の掟(オメルタ)が存在する。
最も、勝手に薬をバラまこうとした小悪党相手に、そこまでの制裁を加える気にはならないが。二度目を見つけても、せいぜい、本人にザリガニの餌になってもらうくらいだ。
「ルチアーノ・ファミリーが仕切ってる、この第二地区でヤクなんざ売りさばこうなんざ、どこのカッペだてめぇ」
最初のコメントを投稿しよう!