闇夜の襲撃者(ファウスト)

1/8
988人が本棚に入れています
本棚に追加
/131ページ

闇夜の襲撃者(ファウスト)

 夜の闇が街を覆う中、響く怒号は慌ただしく、そして疲弊しきっていた。 「これで、四件目ですね」  襲撃を受けた現場に立ったランバートが、ファウストに漏らす。その言葉に、ファウストは苦い顔をするばかりだった。 「被害は!」 「警備をしていた兵が二人、怪我をしました。死者はいません。敵は襲撃後に逃走、足取りはまだ」  状況を確認していた兵が報告をする。その内容の悪さに、最後はごにょごにょと口ごもって消えていった。  ファウストの手に力が入り、爪が手の平に食い込む。悔しさと歯がゆさに気が立っている。  夜陰に紛れて襲撃し、逃げ隠れするなんてこと、許しておけるわけがない。可能なら今すぐにでも敵の拠点に乗り込んで、卑怯者どもを一人残らず根絶やしにしてしまいたい。  だが、それが許される身分ではないことも、ファウストは分かっていた。  軽率な判断と行動が隊を危険に晒し、騎士団の名を汚す。それは言い換えれば、国を汚し貶める事にもなってしまう。 「夜警中の襲撃はこれで四件。どれも騎兵府をターゲットにしていますね」 「あぁ」     
/131ページ

最初のコメントを投稿しよう!