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闇夜の襲撃者(ファウスト)
夜の闇が街を覆う中、響く怒号は慌ただしく、そして疲弊しきっていた。
「これで、四件目ですね」
襲撃を受けた現場に立ったランバートが、ファウストに漏らす。その言葉に、ファウストは苦い顔をするばかりだった。
「被害は!」
「警備をしていた兵が二人、怪我をしました。死者はいません。敵は襲撃後に逃走、足取りはまだ」
状況を確認していた兵が報告をする。その内容の悪さに、最後はごにょごにょと口ごもって消えていった。
ファウストの手に力が入り、爪が手の平に食い込む。悔しさと歯がゆさに気が立っている。
夜陰に紛れて襲撃し、逃げ隠れするなんてこと、許しておけるわけがない。可能なら今すぐにでも敵の拠点に乗り込んで、卑怯者どもを一人残らず根絶やしにしてしまいたい。
だが、それが許される身分ではないことも、ファウストは分かっていた。
軽率な判断と行動が隊を危険に晒し、騎士団の名を汚す。それは言い換えれば、国を汚し貶める事にもなってしまう。
「夜警中の襲撃はこれで四件。どれも騎兵府をターゲットにしていますね」
「あぁ」
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