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「それにしても、ランバートも不運だね。入って早々、こんな事件が起こるなんて」
隣を歩くランバートは、それに曖昧な笑みを浮かべた。確かになれないままこのような事件が起こった事は不運だ。
ランバートの所属は騎兵府と決まったが、まだどこの師団に属するかは決まっていない。その隊を率いる師団長や、その隊の隊員との相性もある。更には各隊が持つ特性との相性もある。
それらを見極める為、一カ月間は預かりとして各隊を移動するのだ。
今日は第五師団についている。
だが、ランバートからすれば、これは一つの好機でもあった。実力を示す機会になるのではないか。
そんな事を言えば怒られるだろうが、一刻も早い解決を望む気持ちは同じなのだから、このくらいの野心は許してもらいたい。
「今回の事件は、根が深そうですね。実行犯のチンピラには情報が一切伝わっていないことや、指示を出した人物の姿がまったく見えてこない事からも、ただの反乱分子とは思えません」
「うん、そうだね。陛下に対して何かしらの害意を持っているのは確かだけれど、そういう組織は多いからね。五年前の戴冠式直前は、大変な騒ぎだったみたいだし」
「それは俺も覚えています。陛下の戴冠に反対した貴族と軍部の一部が、武力に訴えて反乱を起こしたとか」
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