ラーク迎賓館

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ラーク迎賓館

 迎賓館の中は意外と普通の職場だった。  裏に入れば気張った人はなく、気兼ねなく話ができる。むしろスタッフの殆どが若いから、親密になるのに時間はかからなかった。 「リフ君、こっちのセッティング手伝ってくれない?」  若い女性スタッフからのお願いに耳を傾け、ランバートは自分の手を止めて彼女の傍に行く。  背の低い彼女は一生懸命に手を伸ばして、高い所の飾りをつけようとしている。プルプル震える手から花を取ると、それを指示されたところへ差し込んだ。 「やっぱりこういうのって、男の人がいてくれると助かるわ」 「そう言ってもらえると、こっちも嬉しいよ」  簡素な白いワイシャツに黒のスラックス姿のランバートは、リフという偽名を使ってここ、ラーク迎賓館で短期スタッフをしている。  人物設定としては、地方貴族の庶子。母子家庭の生まれで、現在は出稼ぎ中。仕事をしながら士官を目指している事にした。  採用試験も問題なくパスし、こうして働き始めて四日。  仕事内容は会場の設営を中心に裏方全般。パーティー当日はフロアスタッフとして、ワインや料理を客人の元へ運ぶ。 「リフ君、こっちの花のバランスも見てくれないか?」     
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