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「志保ったら、オバチャン入ってない? じゃあ“観賞用”じゃない人はいるの?」
「う~ん、水口課長?」
「圭介さんは駄目だってば!!」
頭を上げるより先に拾った袋をバンッとテーブルに置いた私は、顔を出して志保を睨もうとする。
が、その時、
「 っ、」
自販機に小銭を入れようとしていた人が驚いたように此方を見ていて、目が合った。
・・・・・・合ってしまった。
2秒で、私は視線を志保に戻す。
「冗談だって。鈴香の“圭介さん”に手を出したりしないよ?」
缶コーヒーを飲み干した志保は鼻で笑ったが、私の顔を見て首を傾げる。
「・・・・鈴香? どうかした?」
「何でもない。・・・・戻ろっか」
「うん、そろそろだね。
――あ、お疲れさまです」
立ち上がった志保が缶を捨てに行く途中、笑顔で会釈する。
私も軽く頭を下げて出口に向かった。
「・・・・どうも」
感情の読めない声が耳に届く。
けれど私はその主の顔を見ることはなかった。
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