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「それならお二人用に揃えたものなので、お返しいただかなくて結構ですよ。恐らく3課のファイルも」 「・・・・そうですか。ありがとうございます」 口調を改めた彼に私は笑みを貼り付けたまま、『すみません、失礼します』と机に置いた箸を手に取った。 「・・・・食事中に、失礼しました」 「いえ」 お弁当の蓋を軽く乗せて私は席を離れ、水道のある壁側へ向かう。 誰も居ないオフィスで彼に背を向けるのは失礼かもしれないが、この人も今はウチの社員だし構うものか。 「・・・・此処は営業2課で、あちらが3課でしたね」 さっさと帰ってくれれば良いのに、彼が数メートル離れた私に話しかけた。 彼等が最初の挨拶をした朝には折り畳まれていたパーテーションで、仕切られた向こうが営業3課だ。 「はい。営業の2課と3課では取引相手が・・・・って、業務内容は金崎がご説明した筈ですが」 「ええ、仕事の内容は」 じゃあ何が聞きたいというのだろう。 「2課は確か、水口課長、でしたか」 「はい」 「お若い課長ですね」 「そうですね」 「2課には確かベテランの課員もおいでたと」 「それが何か?」 「・・・・・・いや」
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