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「お早うございます」
その朝、私は本気で会社を辞めようかと思った。
「株式会社セブン・シーズから参りました、速水翔真[ハヤミショウマ]と申します」
静まりかえったフロアに低めの艶のある声が響く。いつものオフィスなのに空気の色が違って見えるようだ。
「本日よりアズミ製薬の一員として精進してまいりますので、ご指導ご鞭撻のほど宜しくお願いいたします」
6年、いや7年?
声も顔も大人びて、学生の頃より穏やかになった。
・・・・・・・・嫌だ。もう忘れた筈だったのに。
「同じくセブンシーズより参りました、立石恭人[タテイシヤスト]です。アズミ製薬でお世話になるからには必ず戦力となり、・・・・」
此処から見える女性陣は瞳をきらめかせて新顔の二人を見つめているようだ。友谷さんに至っては胸の前で両手を握り合わせている。
もしかしたらこのフロアに居る営業部全員プラス新二人の中で、一番憂鬱な顔をしているのは私かもしれない。
これでも動揺が現れないように頑張っているのだけれど。
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