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「あっ、友谷さん! 文恵ちゃん連れて行ってくださいよぉ!」 通りかかった先輩に助けを求めたのだが 「諦めたら? 木花さん。この子のお守りはあなたの役目でしょ?」 冷たく見放された。 教育係というのは『お守り』なのか。そうだったのか。 1コ上の友谷さんは『今日はばっちり仕上げてきました!』的完璧メイク。ブランドもののワンピースで決めている。 「ねっ? 一緒に行きましょうってば!!」 「痛いって! 文恵ちゃん」 引っ張られながらも抵抗を試みる私。どうせ駅に向かうから途中までは同じ道だけどね? 「水口課長も後から来るって言ってたのに!」 「そうだけど、別に私は」 「課長と一緒に帰れば良いじゃないですか!」 「んな、子供じゃないんだから」 通用門から数メートルで押し問答している私達。大通りの歩道でけっこう目立っていると思う。 「何恥ずかしいことしてるの、こんな所で」 「志保!」 聞き慣れた声に救われたと思った私は、振り返って固まった。 美人の志保の後ろで、今夜の主役である二人がこれまた華やかなオーラを放ちつつ立っていたからだ。 「わっ、長谷川先輩! どうして、」 驚いた文恵ちゃんが私の腕をやっと放した。 「『どうして』って? ・・・・ああ、エレベーターが一緒になっただけよ?」
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