<1>

22/39
前へ
/1062ページ
次へ
「でっしょぉー?! リンの字は普通そっちですよねぇ? 私、最初『スズカ先輩』だって思ってました!」 そんな私に気づかない文恵ちゃんの明るさに、今は救われた。 「アンタが『キバナスズカさん!』って大声で呼んだの覚えてるわよ。3課まで聞こえたもの」 「え~、忘れてくださいよぉ」 「有名だわよ? 先輩の自己紹介聞いてなかった新入社員って」 「違いますぅー! 緊張してたんですぅー!」 頬を膨らませる文恵ちゃんに小鹿さんがあははと笑い、私を振り返る。 「珍しい名前なのにね? コノハナリンカさん」 「はあ、」 「僕の名前、覚えてくれてます?」 「えーと、立石、恭人さん?」 「正解。 これから宜しくお願いします、リンカさん」 「あ、・・・・はい。どうも」 なかなか人懐っこい人だ。 良隆くんとは違う、健康的で影の無い笑顔。 そんな風に比べて一瞬、もう1人を忘れかけてたら 「・・・・鈴香」 「 、」 低い声で名前を呼ばれ、半開きだった口を引き結ぶ。立花さんと志保は文恵ちゃんの名前の話題で笑っているから、聞こえてなかったようだ。 ・・・いや、何故私には聞こえてしまったのだろう。
/1062ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14901人が本棚に入れています
本棚に追加