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クリスマスに買ってもらった、思い出の鞄だ。 ブランドの鞄なんて持っていなかった私に、『1つくらい』と良隆くんがプレゼントしてくれた。 高価なプレゼントに私はふさわしいお返しなんて出来なかったけれど、やはり革製のバングルを贈った。 黒い革紐を編んだもので、金属部品は付いてないものだった。 メタルの製品は避けた私に『さすが、分かってるね』と彼は微笑んで、ずっと着けていてくれた。 本当に、最後まで。 「あれ、アンタの子分が働いてる店じゃない?」 志保が大きな交差点の斜め向こうを指さして言った。旅行代理店の大きな看板が目立っている。 「子分じゃないってば」 「弟分か」 言い直してくれた言葉は訂正の必要がない。 「結納はしたの?」 「まだ、だけど」 「え、木花さんって」 後ろから声がしたかも知れないけど、 『せんぱーい! お店どこでしたっけーっ?!』 と叫ぶ文恵ちゃんに負けて聞こえなかった。 「次の角を左! アンタ達の歓迎会と同じ店だよ」 「覚えてませんもーん!」 「若いのに記憶力悪いわねアンタ!」 志保も大きな声で返す。 3課の新入社員が礼儀正しいのはやはり彼女の躾がきちんと出来ているからだろうか。私ももう少し厳しくすれば良かった。
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