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長谷川志保、という名前からは分からないが、彼女にはイギリス人の血が流れている。いわゆるクォーターだ。 『ハーフよりクォーターのほうが美形が多い』と聞いたことがある。その説の真偽はともかく志保は本当に美しい。そして誰もが羨む八頭身でスタイル抜群。 けれどほとんどお化粧をしないし、亜麻色で天然パーマのショートヘアは多分ムースもワックスもつけていない。私服もシンプルなものを好み“女”をアピールしない彼女に、言い寄る男性はあまり居ない。 というより。 新人の頃はチャレンジングな人達も居たけれど、彼等は一通り振られて終わってしまい、 同年代以上には志保を口説く勇気のある男性が残っていないのだろうと私は思っている。 そういえば後輩のタカノ君を可愛がってはいるけれど、男としては・・・・、 うん、違う。 「さぁー、今日は飲むぞー!」 「男らしいね、長谷川さん」 お店の前で腰に手を当て仁王立ちした志保に、立石さんが楽しそうに声をかけた。悪い意味では無さそうだ。 「どうも」 志保が顔だけで斜め後ろを振り向いて、ひと言無表情で返す。タカノ君には優しいのに、この人は気に入らないのだろうか。善良そうな印象は似てるのに。 後で聞いてみよう。
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