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「速水君と立石君には営業部各課を回ってアズミの製品と取引先を把握してもらい、セブン・シーズとの業務提携の指針を・・・・」
まさかウチの会社がセブン・シーズみたいな大手と提携するだなんて思っても居なかった。営業だけでなく企画にも製品開発にもあちらの社員を受け入れているし、ウチからも出向してるらしい。
製薬業界で歴史だけは長いウチが、新しい社長になって社運をかけた経営方針の転換に乗り出したという話は本当だったのだ。
全国展開を目指すドラッグストア、セブン・シーズとコラボしてサプリメントを売りだすだなんて、私が入社した時には噂も聞かなかった。
―― けれどそんな事はどうでも良い。
居心地が悪くなるくらいなら他の部署に異動願いをだすか、会社なんて最悪辞めてもいい。
なんなら帰りに通信教育のチラシでも持って帰って医療事務の資格にでも挑戦しようか。
私は部長の隣に立つ二人の視界に極力入らないよう、体の大きい男性社員の影に隠れて話を聞いている振りをしていた。
だから彼の黒い瞳がしっかりと私を捉えていたことなんて、全く知らなかった。
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