<1>

32/39
前へ
/1062ページ
次へ
課長を席に案内してグラスを渡し空いていた隣席に座ると、なるべく冷えた瓶を探してビールを注ぐ。 「そう言えば鈴香、今日は来ないって言ってたんじゃ」 『鈴香』と呼ばれてプライベートモードに移行。私はテーブルに両肘を突き、片手の甲に顎を乗せた。 「それが、文恵ちゃんに引っ張ってこられて」 「良いじゃないか。親睦を深めるのは大切って、鈴香が後輩に言うべきなんだよ?」 「・・・・今日は、圭介さんが居ない間に華ちゃんと2人で飲もうと思ってたのにぃ」 「ああん? なんだその『鬼の居ぬ間』的な。よし! じゃあ今日は1次会終わったら帰ってウチで飲もう」 「やったぁ! じゃあお願い・・・します」 「水口課長! お疲れ様っす」 そこへ金崎さん達が来たので私は口調を改めた。文恵ちゃんと、それに例の2人まで付いてきてる。 「おう、お疲れ」 “圭介さん”の顔を引っ込めた水口課長が金崎さんに出張の報告し、その様子を立石さんは興味深そうな表情で、もう1人も笑みを浮かべて眺めている。 その瞳が笑っていないような気がするのは私の気のせいか。 「文恵ちゃん、私志保のとこに行くけど」
/1062ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14898人が本棚に入れています
本棚に追加