14897人が本棚に入れています
本棚に追加
宴会がお開きになり、店を出た歩道には2次会に行く人達がぞろぞろと集まっていた。
私は2次会には行かない人種だ。3年前からは特に。
圭介さんは歓送迎会とか大きな宴では2次会までいくけど、その他は私と帰ることが多い。ちょっとだけ周りの視線が痛いけど、『俺も早く帰りたいの』と圭介さんが言うから仕方ないことにする。
「鈴香せんぱぁい、帰っちゃうんですかぁ?!」
文恵ちゃんが大きな瞳をうるうるさせて私を見上げ、袖口を引っ張ってきた。
これ、男の人にやったら高確率で落とせるだろうな。
「じゃあな、ハナ。お疲れ」
私の袖から文恵ちゃんの手を剥がして、金崎さんが片手を上げる。
「お先。お疲れさん」
「お疲れ様でした、課長」
1次会で帰る少数派の中、ふたり並んで歩き出すと時々、まるで恋人みたいだと思うこともある。
でも圭介さんは、良隆くんとは似ていない。
あ・・・・でも他の人に比べれば、やっぱ似てるのかな。
比べる対象として金崎さんを思い描いたまでは良かったが、別の人が脳裏に浮かんで
ずしんと胸に石が落ちた。
「タクシーにするか」
「まだ電車あるけど?」
「華が待ってる」
「うん! じゃあ先にケーキ買って帰ろう?」
それでもケーキを買って水口家に行くと考えたら、すぐに気分も浮上して笑顔が戻る。
最初のコメントを投稿しよう!