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宴会がお開きになり、店を出た歩道には2次会に行く人達がぞろぞろと集まっていた。 私は2次会には行かない人種だ。3年前からは特に。 圭介さんは歓送迎会とか大きな宴では2次会までいくけど、その他は私と帰ることが多い。ちょっとだけ周りの視線が痛いけど、『俺も早く帰りたいの』と圭介さんが言うから仕方ないことにする。 「鈴香せんぱぁい、帰っちゃうんですかぁ?!」 文恵ちゃんが大きな瞳をうるうるさせて私を見上げ、袖口を引っ張ってきた。 これ、男の人にやったら高確率で落とせるだろうな。 「じゃあな、ハナ。お疲れ」 私の袖から文恵ちゃんの手を剥がして、金崎さんが片手を上げる。 「お先。お疲れさん」 「お疲れ様でした、課長」 1次会で帰る少数派の中、ふたり並んで歩き出すと時々、まるで恋人みたいだと思うこともある。 でも圭介さんは、良隆くんとは似ていない。 あ・・・・でも他の人に比べれば、やっぱ似てるのかな。 比べる対象として金崎さんを思い描いたまでは良かったが、別の人が脳裏に浮かんで ずしんと胸に石が落ちた。 「タクシーにするか」 「まだ電車あるけど?」 「華が待ってる」 「うん! じゃあ先にケーキ買って帰ろう?」 それでもケーキを買って水口家に行くと考えたら、すぐに気分も浮上して笑顔が戻る。
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