<1>

7/39
前へ
/1062ページ
次へ
「あの二人、めっちゃ注目集めてますよぉ!」 11時過ぎ。 お手洗いから帰ってきた文恵ちゃんは『女子トイレがすごい盛り上がりようで』と呆れていた。 同じフロアの営業部。とは言えパーテーションで区切られただけの営業2課3課とは異なり、1課と販売促進課は廊下を挟んだ別室にある。しかしお手洗いは当然同じ。 「あの人達、今朝から仕事になってないんじゃないですかぁ?」 まさかソレはないだろうと思いつつ、 私もつい途切れそうになる集中力を無理矢理つないで明日のプレゼン資料に取り組んでいる。 「あれ・・・? 文恵ちゃん、私“ヒアルマイン”の写真、課内フォルダに入れてなかった?」 「ああ、あれ製造中止になるからって古い商品のフォルダに移しました。金崎さんに言われて」 「そっか了解。資料で欲しかっただけ。ありがと」 マウスとカチカチと鳴らして昔の写真を探す。 「・・・・これ、色薄いなぁ」 新しい成分を加えて発売した商品を売り込みたいけど、古いモノの方が知名度が高い。『ヒアルマインの改良版です。』と言えばまず安心してもらえるから、写真をつけた資料を用意したかったのだけれど。 新製品の明瞭な写真と並べると違和感がある。プロジェクターでは見づらいかもしれない。
/1062ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14924人が本棚に入れています
本棚に追加