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『あの、手伝いましょうか』 その時、背後で若い男の声がして振り向くと ニット帽にダウンを着込んだ大学生くらいのガタイの良いのが居た。 ―――『急いで』 と、頭の中で、声がした。 『すみません、お願いします』 『はい、・・・え?』 時間がないと悟った俺はその若者を頼ることにして、コートを脱ぎその辺のバリケードに掛けると、 タンッ、と自ら鈴香の隣に飛び降りた。 『速水さん、』 『登れ。スカートの中は覗かないから』 俺は片膝を立てて屈み込み、俺の膝と肩を踏み台にするように指示をした。が、 『そんな、駄目です』 首を振って後ずさりする鈴香。 ―――『早く、危ない』 『急げ! 頼むから』 遠慮なんかしている場合か!と訴えると、ビクリとした鈴香は、 『分かりました。申し訳ありません』 ささっと靴を脱ぎ地面に放り上げた。それからタイツの足を俺の膝に乗せ、上の男から伸ばされた手を掴み 『はい、よい――しょっ、っと』 彼女の温もりと匂いが俺の半身に乗り、上がっていった。ハアァーーっと安堵の息を吐く。「貴方も」と若者が手を伸ばしてくれたが、 『や、独りでの方が』 俺は胸の前の高さにある地面へ両手を置き、足の下の土を蹴って飛び上がろうとした。 しかしその時、突然グラグラッと辺りが揺れ、再びガチャガチャと周辺のフェンスが音を立てる。そして ガシャンッ、ガッシャ-ン!! 『うわ! ――てっ、』 中途半端な体勢だったため後ろによろけた俺の足元に何かが倒れ落ちてきた。ライトの消えたチューブがつながったままの、数個のバリケード。それに足を取られて無様にも転倒してしまったところに ドッスーン、ガゴンッ、ガガゴゴンッ―― 反対側から、大きな音と振動。 『キャアアアアッ!! 速水さんっっ』 振り返った俺の目に、光る2つの目を持った四角くて大きな物が迫るのが映って。しかし別の角度から体に強い衝撃が来て 後は、―――― 何も覚えていない。
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