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「あ、おいしそう」
お弁当を買うほどの食欲はなかったが、柔らかそうな蒸しパンの新商品を見つけ、自社商品のビタミンドリンクと一緒にレジへ向かった。
すると向こうからきゃあきゃあと女性達の楽しそうな声が響いてくる。
「こちらこそ宜しく。うわぁ、この会社親切な社員さんばかりですねえ。皆さん笑顔がとても素敵ですし」
そして随分と愛想の良い声。まるで芸能人のようなノリだ。
「はいお釣り。それとコレ、試してみて?」
「あ、どうも」
顔馴染みの店員さんにサプリの試供品を袋に入れてもらうのももどかしく、私は急いでエレベーターに向かった。
が、時すでに遅く向こうから避けるべき二人連れが数名の女子社員を伴ってやってくる。
同じ箱に載ることは避けたい。
迷う事なく私はエレベーターの隣にある重い扉を押して隠れると、溜息をついて非常階段を登った。
「あれ、鈴香。階段で来たの? ・・・ってアンタ、2階から?」
5階の扉を開けると同期の長谷川志保が財布とスマホを手に立っていた。
「うん、エレベーターが込んでたの」
「ふうん、・・・お昼今から?」
売店の袋を見た志保に、『じゃあ休憩室で』と誘われフロアの端にある休憩室へ向かう。
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