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『後遺症も残らないみたいで、良かった』
夕食の時間には優樹さんと沙綾が来てくれた。
体のあちこちが痛むせいで、起き上がっての食事が面倒だった俺に、
「今日くらいは」と沙綾が自分用のサンドイッチと交換してくれた。
『鈴香さん、手術の間涙が止まらなかったのよ。柚奈さんが寄り添ってたけど・・・・。おばさまも慰めなきゃいられなかったほど』
『ああ、気の毒だったね。医師から大丈夫だと言われた後も、彼女が一番不安そうで』
そこまで言われると罪悪感を感じる。「心配してもらえた」などと呑気に喜んで良いレベルではなかった。
『「自分の所為だ」っていうだけじゃなかったね、あれは。酷く怯えているように見えた。彼女は、大切な人を失った経験があるから・・・・・・』
ああ、反省しなきゃ。あの時、俺独りで助けようとせずにさっさと声を上げて周りに助けを求めていれば良かった。
『怖い思いをさせてしまったな』
『ハハ、翔真は被害者なんだけどね』
ちなみにトラックの運転手も怪我を負ったが、さほどの重傷ではないらしい。
『あなたたちが立ち入り禁止の工事現場に入ってたんだから、損害賠償は請求できないかしらね』
『金? 大丈夫。保険ならたっぷり入ってるよ。ペルーに行く前に見直したからね』
『一応、あの工事現場の安全管理に問題が無かったかどうかは審査してもらうかな。警告灯が消えたと聞いたし。傍に積んでた鉄材が落ちてきたそうだし』
『どうでも良いよ、・・・・鈴香が無事だったんだから』
死人も出なかったし。あとはもう割と、どうでも良い。
『ちょっと翔真。専務としては、仕事のことは「どうでも良い」で放っておいて欲しくないんだけど』
『あ。』
忘れてた。
『アズミの水口課長には鈴香さんが手術の間に連絡してくれてたけど』
『あー、申し訳ありません七海専務。社会人としてあるまじき』
『ハハ、もう良いけど。週明けにアズミの人事と交渉して、交代要員が要るかどうか決めておく。元々出向する筈だった社員も戻ってきてるしね』
『・・・・・うん』
俺たち出向組はまだアズミの仕事内容を研修中のような扱いでもあり、俺が抜けても仕事が回らない訳ではないが。提携に向けてギブアンドテイクを探る要員なのだから、抜けっぱなしは失礼にあたるだろう。
けれど、俺が長く抜けるなら、代わりに行く者がそのまま2年を終えるまで勤めることになるのか―――??
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