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『いとこも、言ってた。俺に「また会える」って。俺は・・・・優樹さんと沙綾の子供になって、生まれ変わってきてくれると思ってる。 現実的じゃ無いかもしれない。俺の夢物語かもしれない。でも確かめようが無いなら、心の中でそう信じていても構わないじゃないか』 『・・・・生まれてくる子供に、期待かけ過ぎたりしません?』 『それは気をつける。思う存分自由に生きて欲しい、それだけ』 『そうですね。私も・・・・』 言いかけて顔を上げた鈴香が、濡れた瞳で俺を見つめたまま何事か考え込む。 『鈴香?』 『先輩は、・・・・私が居なくなったら、嫌ですか?』 『―――っ、』 不意に聞かれて心臓がギュッと鳴った。 『それは、・・・・俺の前からってこと?』 『はい』 それは、今は想像もしたくない、が。 『嫌だ・・・・けど、鈴香の幸せに俺が・・・・邪魔なら』 『じゃあ、私がもし、・・・・傍に居て欲しいって言ったら?』 『居るよ。喜んで』 そんな夢のような、と思いつつ、昨日からの鈴香の様子にどこか期待して浮かれている俺が居るわけだ。 『それは、昔のことがあるから?』 『ん?』 『罪悪感からですか?』 『違う。全然違う。罪悪感だけなら謝罪してどこかに姿を消しているよ。 ・・・・申し訳ないが俺は、鈴香に嫌われてるのを承知で、それでもみっともなく付きまとってきた男だよ?』 鈴香の頭から滑り落ちた手が、彼女の手に触れたくて彷徨ったが、諦めて少し手前のシーツに落ちた。 『私は、先輩の・・・・役に立つ女じゃないですけど、良いんですか?』 『“役に立つ”って何?』 『沙綾さんみたいにどこかの社長令嬢じゃないですし、みな美さんみたいにバリバリ仕事も出来ません』 『それ、必要?・・・・・・じゃあ鈴香が俺に「傍に居て欲しい」って言ってくれたのは、何のメリットを狙ってのセリフ?』 『メリットは・・・・・・私の精神安定です』 『それなら嬉しい。じゃあ俺も求めるのはそういう事だよ。覚えてる? 昔俺が鈴香を初めて口説いた時も、ただ傍に居て欲しいって言ったのを』 『でも捨てたんですよね』 『後悔した。もの凄く後悔した。ずっとずっと後悔してた。一生分後悔した』  
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