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『スタンフォードに留学して、お仕事も順風満帆にやってきたのに?』 そう言う鈴香の顔は以前のように棘のある表情では無く。少し不安げで、そしてちょっと拗ねているようにも見える。 『鈴香、・・・・もしかしたら、もの凄く引かれるかも知れないけど。俺、百合ちゃんからストーカー呼ばわりされてた』 『百合ちゃん?』 『俺の叔母にあたる人。覚えてないかな、ニウを拾った晩、手当をしてくれた、』 『え、・・・あれ、叔母様でしたっけ』 ああ。 言ってなかったかも知れない。 『先輩、叔母様をストーキングしてたんですか?』 『おい。・・・・・・鈴香を、だよ』 『え!?』 『違う! ストーキングってほどじゃ無い。たまに、マンションの傍まで行ったりしてただけで』 そして俺は自白を始めた。 勢いというか、今を除いて好機は無いだろう。後で百合ちゃんに暴露されるよりは、今の方が良い筈だ。 『留学前は、鈴香の傍にはたいてい森井が居て、ヘタレな俺は近づけなかった。 留学した年の冬に帰国した時も、マンションまで行ってみた。イヴの晩かな、ちょうど鈴香が誰かに車で送られて帰ってきたのを見たけど・・・・やっぱり勇気がなくて声を掛けられなかった』 『・・・・・・。』 『それから・・・・春だったかな、ゼミの後輩で岩田って男が鈴香に付きまといだしたって話を聞いたこともあった。心配で、・・・・高川先輩に知らせたら追い払ってくれた』 『岩田?・・・・・・あ! あのバイト先に来た人!?』 『高川先輩から、鈴香に新しい恋人が居るというのも聞いた。・・・・良隆くんかな?』 『あー、・・・・はい、そうですね。その頃からでした』 遠い昔のような、ついこの間の事のような。 『ハルナからも鈴香の情報をもらってた。アイツの後輩が鈴香の前のマンションに居て』 『ええっ、・・・・ハルナって、大学のハルナ先輩ですか?』 『そう。ああ最近連絡取ってないな。30、いや35歳になってもお互い独りだったら結婚しようとまで言ってたのに』 『はい?? なんですかぁそれ!』 鈴香はハハッと笑った。互いに失った恋を引きずっていた俺とハルナにとっては、そう冗談でも無かったのだが。しかしここ2年ほど音沙汰無しなくらいだから、冗談レベルだったのだろう。  
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