<22>

47/48
14880人が本棚に入れています
本棚に追加
/1062ページ
『これも縁だよ。信用できる中堅の製薬会社を探していたら、知ってる会社の名前が候補リストの上の方にあったってだけ』 『しょ、職権乱用、』 『ハッ、酷いな。アズミは良い会社だ。さすが鈴香が選んだだけのことはある』 にっこり笑うと、今になって眉を潜められた。何故だ。 『・・・・思い出しました。私、大学で初めて先輩に話しかけられた時、「胡散臭い笑顔だな」って思ったんですよね』 『いやなんで今、それを思い出す?』 『どうしてでしょうね』 『フ、もう一度鈴香を口説かせてもらえるなら、それも良いかな』 『いえ要りません』 即答か。さすがにショックだな。 『でも先輩はどうして、そこまでして私なんですか』 『昔も言っただろう? 俺は、鈴香が俺の傍に居てくれれば「大丈夫」って思えるんだ。鈴香さえ居れば幸せに生きていける』 『またそんな・・・・思い込みです』 『でもそんな感じなんだ、本当に。きっと一生思い込んでるよ? 8年後悔し続けたことだし』 『私にそんなたいそうな価値は、無いですよ?』 『良隆くんのことは信じられるのに、彼が誰よりも愛した自分の価値を信じられない? 鈴香はただ、鈴香で居てくれれば良いんだ』 『・・・・せ、先輩、』 『だから・・・・どうか、俺を鈴香の傍に居させて欲しい』 『―――っ、』 『簡単には信じられないのも分かる。俺が過去に犯した罪が、鈴香を怯えさせるんだろう。・・・・けど誓う。良隆くんに誓う。夏樹に誓う。二度と鈴香を裏切ったりしない』 『先輩・・・・・・先輩は、私を、・・・・好きなんですか?』 今度は俺が目を丸くした。 『今更?』 『だ、だって。「好き」とは言われてないです』 『好きだよ。世界で一番好きだ』 『わっ、私が今も良隆くんを好きで、忘れられなくても、ですか?』 『忘れる必要が何処にある? 俺も彼に対する感謝を忘れない。彼に対する気持ちは大事に取っておいて欲しいし、俺と比べることはない』 『本当に?』 『俺も、鈴香にまた好きになってもらえるよう努力する。鈴香が良隆くん以外の男と人生を歩む選択をするなら、どうか俺を選んで欲しい』 『わっ、私・・・・。私、先輩が、好きです』 『――っ、なっ、・・・・・・え?』 今、何て言った?
/1062ページ

最初のコメントを投稿しよう!