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その上で私達が再びお互いを必要とする気持ちを固めたと聞いて、夫妻はとても喜んでくださった。セブン・シーズの社長に『うちの甥をどうか末永くよろしく』と頭を下げられて、事態が大きく変化したことに改めてドキドキしたものだ。
「今年の夏は、留香さんの結婚式があるからなぁ。華さんの出産も・・・・、あと柚奈の式も」
「先輩、順番がおかしいです」
「ああ。柚奈の式が6月で、最初だな」
「もうっ、」
重ねられた手を引っこ抜こうとしたら、ぱっと握られたから、ちょっと睨んでみる。それから一度深呼吸して、口を開いた。
「・・・・先輩、私と――、」
緊張しつつ話し始めたのに、
握った手の指にキスをされて止められた。
「鈴香、怒らないで。分かってる」
「怒ってるんじゃなくて、」
「きちんとした言葉は、退院してからちゃんとした場所で言いたい。俺に言わせて欲しい。だから待ってくれないか?」
「 っ、・・・・・・はい」
華ちゃんに倣って逆プロポーズ、と思ったんだけど。
うーん、未遂に終わってしまった。
「指輪も病院じゃ用意できないし。一緒に見に行こう? もうカラスにはやらない」
「カラス・・・、ああ」
昔クリスマスに買ってもらった指輪は、やはり華ちゃんによって捨てられていた。失恋のうえ高熱を出した私を看病した後、車で帰る途中の山道で怒りにまかせ、指輪を谷へ思いっきり投げ捨てたと言う。
『カラスが沢山居たから、咥えてったと思うわ』と鼻を鳴らした華ちゃんに、先輩は
『買い直します。今度は一生モノを』と姿勢を正した。
・・・・「一生モノ」って、婚約指輪って事だよね。
にやける口元を引き締めていると
「病院に閉じこもってるから、つい先のことばっかり考えてしまうんだよな。・・・・楽しみ過ぎて」
先輩がさらに私の手を撫でて甘々攻撃を仕掛けてくる。
「ゴールデンウィークには鈴香と旅行も良いな、とか。
そう言えばネイサンが、『もし良ければハネムーンの行き先に検討して』って、カナダの観光地資料を添付ファイルで送ってくれた。日本人のあまり知らない穴場もあるからって。
鈴香、アズミは特休、何日取れる?」
―――ですから。
順番がおかしいですって!
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