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カナダのお友達は先輩の事故の知らせを受け、帰国の日程を数日遅らせお見舞いに通ってくれた。 私が先輩とつきあい始めたのをとても喜んでくれて、 『ショウマがどれ程君を恋しがっていたか、僕は多分ユウキよりよく知ってる。もしもショウマが優しくないことがあったら僕に言ってね。君がどれだけ大切な人か、彼に思い出させてやるよ』 そう明るく先輩の肩を叩き、先輩が『そんなことは起こらないから』と拗ねた顔をすると更に嬉しそうに笑っていた。 「先輩って、お友達に恵まれてますよね。羨ましい」 外国のお友達からもそこまで親身になってもらえるなんて。・・・・人望だろうか。 「立石さんも凄く先輩のこと慕ってるし。藤田先輩ともいまだ仲が良いなんて」 「鈴香だって長谷川さんって友人が居るじゃないか。岡田さんも」 「志保は貴重な友人ですけど、彼女だけですよ。文恵ちゃんはただ先輩として私を慕ってくれてるだけで」 「先輩か。・・・・・ねえ、高川先輩、覚えてる?」 「覚えてますよ。あのもみあげの人」 『そうそう』と先輩は笑う。 “我楽”のバイト時代私に絡んできた岩田という男の人を、高川先輩に頼んで追い払ってくれたと言ってたっけ。 「俺ね、高川先輩から嫌われたんだよね。鈴香を泣かせたからって。・・・・だから岩田のこと頼んだ時も『こっちで何とかするからお前はもう関わるな』って言われて・・・・泣きそうだった」 「ええ~」 あの人、人の良いお坊ちゃんっぽかったけど、本気出したら怖そうだったな。 「祐介も鈴香と別れた後はしばらく距離を置かれた。ハルカからも『同情はしないからね』って言われたなぁ」 「そ、そうだったんですか」 「みんな鈴香の味方だったからね。当然だけど」 「・・・・・・・・。」 フフ。・・・ちょっと、嬉しい。 あの頃、私の世界は閉ざされて誰からも背を向けられたと思い込んでいたけれど、 私を思いやってくれてた人も居たんだ。 「立石もネイサンもありがたい友人だし、優樹さんも沙綾も大切な存在だけど。もう優先順位を間違えたりしないからね。俺にとっては鈴香が一番だ」 「きゃ、」 ぐいっと手を引かれて、ベッドの上に倒れ込んだ。 「先輩っ、ちょっ、痛くなかったですか?!」 「フハ、俺が引っ張ったのに」 だって私、先輩の膝に手を突いちゃったし。
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