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志保の顔を思い浮かべてほっこりしていたら、 「そう言えば昨日恭人が来たから、長谷川さんとのこと尋ねてみたんだが」 タイムリーに先輩がその名前を出した。私が前々から気にしていた件だ。 「なんて言ってましたか?」 「うん、自分でも確信が無いようで、『ファン心理に近い感じかなぁ』って」 「・・・・ファン、ですか。立石さん、先輩に対してもそんな感じですよね」 「うーん、俺は同期として対等にやってるつもりなんだけどね。こっちが年上のせいか、『応援してます、頑張ってください!』って目で見てくることはよくあって・・・・。まあ素直に嬉しいし、可愛いヤツだとは思うよな」 ・・・・なにその『つながってます』感。 なんか、ちょっとムッとしたぞ? 「あいつ、俺の1コ上に兄さんが居るんだよな。その兄さんを崇拝してるっぽくて。医者になっているんだが」 「お父様みたいな? じゃあお兄様は後を継ぐんですね」 「立石教授は開業してる訳じゃないけどね。外科医だそうだから、同じ道を進んだわけだ」 「立石さんはお医者さんになろうとは思わなかったんでしょうか」 「向いてないと思ったそうだよ。グロテスクな手術の写真とか見て。 それに恭人の兄さんが医学部を目指した頃はまだ教授は海外で腕を磨いていた時期で、下の息子も医学部へ・・・って言えるほど裕福でも無かったらしい」 そう言えば、セブン・シーズの先代社長が教授に経済的な援助をしてたと聞いたような。 「兄弟とは言え気質が違うのかもね。ただ、恭人は兄さんが努力家だと誇らしげに語ってた。・・・・あいつが長谷川さんに対しても応援したくなるってのは、分かる気がするな」 「そうですか。・・・・でもじゃあ、みな美さんに対しては?」 「彼女は・・・・・・・正直押しが強すぎて、恭人は若干怯えてる」 「・・・・フ、線引きが難しいですね」 「そうか? 長谷川さんとみな美は違うだろう。鈴香の友達は・・・・気遣いが出来る」 つまりみな美さんは? とは聞かないでおこう。いずれにしても志保の評価が高いのは喜ばしいことだ。 「恭人は俺が鈴香にずっと片思いだったのを知って、なんとか力になろうとしてくれたんだから。俺も応援したいのはやまやまなんだが。・・・・ファンとか言われたら、どう応援したものか」 “片思い”って・・・・。言い方に作為を感じるから、スルーしておこう。 「しばらくは今のままで良いんじゃないでしょうか」 立石さんも殺虫剤かけられたくないから、慎重にいくつもりなのかも。
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