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「長谷川さんはあまり男に興味が無いんだな? 美人なのに、“女”をアピールするのも嫌、って感じだし」 「そうですね。入社以来”お断り”してきた男性の数は両手の指を往復してますよ」 志保が男の人より女性が好き、というのは内緒だけど。『強引に来る男の人には嫌悪感を抱きやすい』と教えると、先輩はふんふんと納得していた。 モテる人間同士、共感する部分も大きいのだろう。 面会時間も終わりに近づき、私は『また来ます』とコートを手に取った。 「疲れてる時は無理しないで良いよ。華さんのところにも行きたいだろうし」 「そうですね。でも無理はしてませんよ、全然。だって・・・」 だって、会いたいから来てるんですから―― とは、照れてしまって言えなかった。でも表情で伝わったのか、先輩は嬉しそうに目を細めて私のクイ軽くと引く。 「ん。・・・・じゃあ、また。待ってる」 軽くキスをして、病室を出た。 廊下にはパジャマ姿の入院患者の姿もあって、薬の匂いが漂っている。 面会を終えて帰る家族の声も響いていて、病棟だというのになんだか賑やかだ。 時間外出入り口へ向かう廊下は記憶にある場所よりずっと明るい。 ―――「思い出して辛くなったりしない?」 良隆くんの時も夜間に通った私を気遣って、先輩が心配してくれたりもしたけれど、大丈夫だった。 病院も違うし 回復すると分かっているから。 「あ。晴れてる」 「時間外出入り口」と書かれた扉を出て、バス停のある表通りへ向かう途中。街の明かりが遮られて、珍しく星がよく見えた。オリオン座や周りの星々が溢れるように輝く光を纏っている。 「良隆くん。星が綺麗だよ」 先輩と付き合うようになっても、良隆くんを大切に思う気持ちは変わらない。 ―――「うん、綺麗だね」 私の呼びかけに答えてくれるのもいつも通り。でも気のせいか、ほんの少し声が遠い気がする。 ―――「また会えるからね。一緒に星も見ようね」 そんな言葉が、聞こえた気がした。
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