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「鈴香さん、来てくれたの?」
「逆。鈴香さえ来てくれれば良かったんだよ」
「んまっ、偉そうに、このストーカーまがいが!」
「こんにちは。・・・・ええと、」
退院の日、昼から休みを取って病院に行くと、先輩のお母様ともう一人、かすかに記憶にある顔の女性が居た。
「百合さん?」
「正解。嬉しいわ、お久しぶりね鈴香ちゃん」
8年前のニウの恩人さんだ。お父様の妹さんだけれど、こうして見ると先輩の目元なんか、ご両親よりも百合さんと似ている。
「百合ちゃん、“ストーカーまがい”って?」
「この子3年前まで鈴香ちゃんのこと軽くストーキングしてたのよ」
「あらー。訴えて良いわよ? 鈴香さん」
「もう示談にしてもらったから!!」
太刀打ちできない先輩がやけくそ気味に叫んだけれど、なんだか照れ隠しっぽく見えた。それに“百合ちゃん”とは、七海の伯母さんより打ち解けて見える。
年の離れたきょうだいみたい。
「なんで百合ちゃんまで来たんだよ」
「奇特なお嬢さんの顔を拝みに来たのに決まってるじゃない」
「もう少し後でも、・・・あ、ありがとう鈴香」
ベッドから立ち上がろうとする先輩に松葉杖を渡すと、『よく気が利くわねぇ』とお2人から褒めてもらえたけど。
・・・・取ってあげてください、お母様。近くに居たのに。
「車椅子じゃなくて大丈夫なの?」
「なんとか。左の方はほぼ治ってるって」
先輩は両足ギプスだったのだが、左足はサポーターだけになった。右はがっちりしたサポーターに、添え木のように金属が付いている。
それでも外してお風呂にも入れるようになったと喜んでいた。
「鈴香さんの家が近くで良かったわねぇ」
「そうよねぇ。っていうか、『あの駅近くにすれば?』って言ったの私だから、私の手柄じゃない? 母さんに感謝しなさいよ、翔真。
ねえ荷物これだけ?」
「ああ。昨日のうちに鈴香に持って帰ってもらったのもあるから」
「ありゃ。鈴香ちゃんからすればアンラッキーだったかもね」
「鈴香さんをこき使っちゃだめよ翔真。
柚奈のシフト動かして、あなたの世話出来るようにするから」
「いえいえ、私にもお手伝いさせてください」
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