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「お2人の事ですか? はい、皆知ってますよ」
「み、皆ぁ?」
思わず志保の顔を見ると、『私じゃ無いわよ』という顔で真っ直ぐ此方を見てくる。
するとマエノさんが
「向井課長が」
「え?」
「社長から聞いたって」
「えええ~~っ!?」
何で社長がっ?
「社長がポロッと言っちゃったらしくて。『内緒かも知れないから皆黙ってなさいよ!』って、向井課長が3課で言いふらし回ってますよ」
・・・・・・公然の秘密って、こういうモノか?
私が肩を落としていると、志保が
「社長も向井課長もはしゃいでるのよ。嬉しくて仕方ないんじゃない? 社長からすればセブン・シーズとのパイプが太くなった訳だし」
「木花くんが幸せになってくれれば個人的にもとても嬉しいって、仰ったそうですよ」
マエノさんの言葉に一瞬胸が詰まった。
社長は3年前の事情もご存じだ。水口課長の弟が亡くなって、私が体調を崩し病休を取った頃のこと。
「良いじゃない。トップのお墨付きで付き合えるんだから。うち社内恋愛禁止じゃないし?」
志保がニコッとマエノさんを見て、彼女もエヘッと目尻を下げる。
そこへ
「居た。木花さん」
と、知った声がした。
「社食で会えなかったから探してたのよ。これ、翔真に渡してくれないかしら」
そう言って差し出してくるのは、完全にバレンタイン仕様の紙袋。
「これ、」
「毎年渡してたのよね、友チョコみたいな感じ? 彼女が出来たから急に止めるのも、かえってどうかと思って。今年も義理チョコと一緒に早々に買ってたし」
淡々とそう言うみな美さん。私を通して届けようとするのは、私が今晩翔真さんに会うと知っているからだ。
「・・・佐藤さんも、向井課長から聞いたんですか?」
「向井課長? 私は沙綾先輩から聞いてたんだけど」
ああ、そうだった。と、上がっていた肩の力が少し抜けた。
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