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彼の言葉をみな美さんがどう取ったか考えては負けな気がして、無心にタマネギをみじん切りにする。 ニンジンはすりおろし。ナツメグも一振り。柚奈さんが頻繁に料理をしに来ているため、昔とは違いキッチンにはいろいろな料理道具や調味料が揃っていて作業もはかどる。 「柚奈が朝、スープ作って行った。まだ結構残ってるだろ」 「わ、美味しそう!」 お鍋の蓋を開けると野菜たっぷりのミネストローネ。ラッキー、じゃあ付け合わせは簡単なモノで十分。 「お待たせしました」 「美味そう。いただきます」 手を合わせてから翔真さんが一口目のハンバーグを口に入れるまで5秒とかからなかった。 「うまっ」 「お店の味には敵いませんよ」 速水家が経営するレストランみたいなプロの味ではない。でもこれまで華ちゃんと一緒にいろいろ試して、結局これが一番手軽で美味しいとなったレシピ。ソースはフライパンに残った肉汁に市販のウスターソースとケチャップを適当に入れて煮詰めたものだ。 「柔らかくて美味しい。やっぱり俺の好みの味だ」 「お口に合って良かったです。それよりバターが上等だとこんなに味が違うんですね」 レンジで加熱して仕上げにバターでソテーしただけのジャガイモがこんなに美味しいなんて。そしてミネストローネもお野菜の甘みとベーコンのコクで、これだけでもご馳走。 「どうしよう、ハンバーグもう1個もらおうかな」 「ふふ、良いですけど、デザートもありますよ?」 「デザート?」 「チョコレートケーキ、作ってきました」 「チョコ・・・・」 翔真さんの顔に徐々に笑みが広がる。 「もしかして、バレンタインの?」 貰えないとでも思ってたのだろうか。 「学生じゃあるまいし、とも思ったんですけど。華ちゃんが圭介さんに手作りするっていうから一緒に」 「光栄だな」 夕食のお皿を下げて、珈琲を淹れて。 お皿にガトーショコラを盛りつけて持参したパウダーシュガーを振りかけた。 「・・・・・・・・。」 「翔真さん?」 目の前に置かれたお皿をただ見つめている翔真さん。合わせた唇に力が入っているのが見て取れる。  
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