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それからも私は週に4、5日は翔真さんの部屋に通った。平日は夕食を共にし、週末はまったり部屋で過ごしたり、圭介さんの運転で華ちゃんと4人でドライブしたり。 そして光がめっきり春めいてきた頃、 「わあ、すごーい」 「ハハ、お取り寄せスイーツってやつ」 ホワイトデーには柚奈さん仕込みのビーフシチューをいただいたあと、色とりどりのお菓子が詰められた大きな箱を開けてくれた。約束通り2人で食べようと、珈琲を手にわくわくして眺める。 「鈴香からどうぞ」 「えへ、どれからいただこう・・・・、あれ?」 沢山に仕切られた枠の中、どのお菓子も我こそ主役と華やかに主張しているうちに、 一つだけ小さなカップにビーンズチョコが盛られていた。そこにきらりと輝く光が混じっている。 「え、あ、ああーっ」 「それが良い? さすがお目が高い」 「もうっ、翔真さんったら」 こんな所に、ダイヤの指輪! 「仕上がったからって、今日店の人が持ってきてくれたんだ」 「吃驚しました。いたずらが過ぎますよー」 「ハハ、跪いて差し出すのが良かった?」 そう言ってチョコの盛られたカップから翔真さんが澄んだ煌めきを摘み上げ、『手』と1音で要求する。 ビク、と体が跳ねて今更ながら緊張が襲ってきた。 「鈴香?」 「は、はい。・・・・えっと」 「フ、お姫様、お手をお貸しください」 差し出された彼の左手に、こっちだよね、と自分の左手を乗せる。ゆっくりと一呼吸した彼も、もしかした緊張しているのだろうか。 「木花鈴香さん。・・・・幸せにするから、必ず幸せにするから、俺と結婚してください」 「は、はいっ、・・・はい」 いまだ驚いたままの私の薬指に、するすると金属が滑ってぴたりと収まる。 「ごめんね、ちゃんとしたディナーとか行けなくて」 「や、そんなの、」 そっと翔真さんの右手が私の手を包み、それから指輪を撫でて指先で止まる。 「ごめんね。もしかしたら鈴香にはもっと良い男が現れるかもしれないのに。でも俺には鈴香しか居ないから」 「ううん、私も、私も翔真さんしか・・・・。うん、はい、」 息を吐くと漸く肩の力が抜けて、私は目の前の人を見つめて微笑む。そしてもう一度重なった手に視線を落とし、今度は私が両手で彼の手を取った。 「一緒に、幸せになりましょうね」
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