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ワインもいただき、お料理は翔真さんがアラカルトから選んでくれて、私の好きなものばかりでとても美味しかったし、デザートまでしっかり味わった。それからお手洗いに行って戻るとテーブルにスタッフが来ていて、新しいワインのボトルを手で示している。
「え? また飲むんですか?」
珈琲も飲んだのにと首を傾げると
「美味しかったから貰って帰って夜に飲もうかと思って」
「ああ。」
「お包みいたしますね」
そういう事かと、感じの良い笑顔を残して去って行くスタッフを見送って、
翔真さんがまだ立ち上がる気配もないので私は席に腰を下ろした。
「とても美味しかったです。良いお店ですね」
「上のバーも良い感じだよ。行ってみる?」
「いえいえ、ホテルのバーだなんて私には」
銀さんのお店なら緊張しないけれど。
「・・・・今日は楽しかったから、帰るのがもったいなくて」
「はい! 私も楽しかったです。でも翔真さん疲れたでしょう?」
「いや、・・・・まあ、少し疲れたかな」
空いた席に置かれた幾つものショッパー。ランジェリーショップのパステルカラーの袋以外は翔真さんが持って歩いてくれた。
「だから頼みがあるんだけど。・・・・鈴香、今日は泊まれる?」
「え、・・・・・・・・」
ト、トマレル?
それは翔真さんちにお泊まり、というコトでしょうか。・・・・脚の装具も取れた今、それが意味することは、
「良隆くんにもちゃんと断りを入れてきたし」
「ええぇー」
そんな許可申請してたんですか?
っていうか、・・・・待ってくれてたのか、な。 お墓参りに行くまではと決めて。
「着替えもあるし、ね?」
彼が視線を走らせたのはパステルカラーの袋。
わあ、そうか。確信犯だったのか。
「・・・・駄目か、な」
「え?」
私が呆れていると翔真さんが珍しく眉を垂らした。私の気が乗らないのだと受け取ったらしい。
「いや、ええと・・・・駄目じゃない、です」
ずっと紳士で居てくれた婚約者を、拒むつもりなんてない。むしろ・・・・どこかで心待ちにしていた。
「良かった。実はもう、予約したんだ」
「は?」
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