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「鈴香・・・・」 頬に手を添えられて唇を求められ、ふれあう吐息が徐々に熱を持つ。体がゆっくりとソファに倒され、窓の外に夜景ではなく点滅する飛行機の光だけが見える、と思ったとき 「もう、ワインは良い? 俺はワインより」 私をもっと欲しい、と囁かれた。 『今すぐ』と請われたけれどシャワーだけはと頼み込んだ。 翔真さんが選んだ下着にバスローブを羽織って出ると、思い出した彼が『後でゆっくり見せて』と言い残し自分もバスルームに消える。 鼓動の強さを持てあましつつ、クローゼット横の姿見の前でバスローブを解いて見ると、色気があるとは言えない身体が映った。 それでも綺麗な色の下着のおかげか、少しは可愛く見える気がする。 ローブの紐を括り直したものの何をして待っていれば良いのか分からず、もう少しアルコールの力を借りようとグラスにワインを注いでコクコクと飲んだ。 窓から見下ろす夜の街はまだ寝静まる様子もなく、ネオンが輝き車列は光の川となって走っている。どれ程多くの人間が行き交い暮らしているか、そんな中で私と翔真さんが8年の時を経て再び出会って寄り添って・・・・。 ――違うか。 彼が私の元へ来てくれたんだ。 彼ほどの男性ならば、いくらでも素敵な女性を見つけることは出来た筈なのに。 ガチャリ、と扉の開く音がして腰にバスタオルを巻いただけの翔真さんが現れた。 私はカーテンを閉めてゆっくりと彼の方へ歩みを進める。 何か言いたげに開いた口を、結局何も言わず閉じた彼が 私を引き寄せて抱きしめた。 「翔真さん・・・・。私、感謝してます」 「・・・・感謝?」 「こんなに広い世界の中で、私を見つけてくれて・・・・選んでくれて」 彼が顎が私の頭を掠めて、首を振ったのが伝わる。 「選んだわけじゃない。引きつけられたんだ」 彼の腕にしっかりと包み込まれた私の頭は、ワインのおかげでちょっとふわふわしてきた。 「ふふ、8年も、離れてましたのにね」 「自業自得だけど、寂しかったよ。心は鈴香に残したままだったから。ずっと鈴香の元に戻りたかった」 「信じます。だから・・・・うん、感謝します」 「俺こそ感謝だ」 そっと身体を離され、去った温もりを寂しく思う間もなくするりと紐を解かれ。ためらいがちにバスローブの胸元を開いた翔真さんが、うっとりと微笑んだ。 『ああ、綺麗だよ。震えるほど綺麗だ』 まるで芸術品でも鑑賞するかのような溜息が添えられ、こんな体でも特別に思えてくる。
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